マンションを売却すると得られる多額のお金の一部は、税金として国や地方に納めなければなりません。しかし、特例制度を利用することができれば、この納めなければならない税金を少なく抑えることが可能です。将来、マンションを手放す必要が出てきたときのために、売却時にかかる税金や特例制度は基礎知識として覚えておきましょう。
マンションの売却に伴って課される税金はたくさんある
マンション売却時に課税される税金は、売却手続きの中で課されるものと、手続きが終了した後に納付するものに分けられます。
売却手続き中に納付する税金は、印紙税と登録免許税です。印紙税は、身近な経済取引の中で作成される文書のうち、法令で対象に指定されているもの(課税文書)に課せられる税金で、マンション売却時に作成される売買契約書も課税文書に含まれています。
納付は契約書に税額分の収入印紙を貼り、消印を押すことで完了します。登録免許税は行政が行う登記や登録、免許、許可などの際に課税されるもので、マンションの売主は抵当権抹消登記の際に生じる登録免許税を負担することになります。
手続き終了後に納付する税金としてまず挙げられるのは、所得税、住民税(道府県民税と市町村民税)、復興特別所得税といった所得に対する税金です。マンションの売却益は譲渡所得に分類され、購入日から売却した年の1月1日までを所有期間とし、5年を超えるかどうかで適用される税率が変化します。
マンション売却後に納付する税金を少なくできるかどうかは、所得や税額の控除制度をどれくらい適用させられるかによって決まります。
また、固定資産税と都市計画税については、マンションを売却した年の分は売主側に納税義務があります。ただし、今日では引き渡し日以降の分は買主側の負担とするのが慣習となっています。
納税額を抑えるのに役立つ3つの代表的な制度を知ろう
マンション売却に伴って発生する税金を少額にするのに役立つ制度としてよく知られているのは、「3,000万円の特別控除の特例」、「所有期間10年超の軽減税率の特例」、「特定居住用財産の買い替え特例」の3つです。
3,000万円の特別控除の特例は、マイホームの売却による譲渡所得から3,000万円を控除できるというもので、物件の所有期間に関係なく控除を適用できます。所有期間10年超の軽減税率の特例は、購入日から売却年の1月1日までの期間が10年を超えていれば、所得税と住民税の税率を通常より低くできるというものです。
これらの特例は併用することができ、売却益が少なければこの2つの特例だけで納付額をゼロにすることも不可能ではありません。
特定居住用財産の買い替え特例は、所有期間と居住期間がともに10年を超えていて、売却代金が1億円以下となったマイホームに限り、買い替えた住宅を将来売却するときまで課税を繰り延べられる制度です。
税の減免にはならず、課税時期が先延ばしになるだけですが、適用すれば売却によって得た利益の大部分、ケースによっては全額を新しいマイホームの購入資金にあてられるようになります。ただし、この制度は先に述べた3,000万円の特別控除の特例や、所有期間10年超の軽減税率の特例と併用することができないので注意が必要です。
状況に応じて最適な特例制度を選んで節税を試みよう
マンションの売却では印紙税や登録免許税、所得税、住民税、復興特別所得税などたくさんの税金が課されます。
一般的には多額の利益が出るほど、税負担は大きくなりますが、居住用のマンションの売却の場合では3,000万円の特別控除の特例や所有期間10年超の軽減税率の特例、特定居住用財産の買い替え特例などといった制度を上手に活用すれば税負担を大きく減らすことが可能です。
それぞれの特例には適用要件が細かく定められているので、状況に応じて最適な制度を選びましょう。